栄養部

化学療法と食事

化学療法を受けられてる患者様へアドバイス

 

紹介メニューは実際に当院で提供している食事です。
入院された場合は、担当栄養士が病棟へ伺い、食事内容の確認を行います。
必要に応じてできるだけ本人の希望に添えるよう実施していますので、お気軽にお声かけ下さい。

食欲不振

食欲がない時・・・・・

  1. 3回の食事にこだわらず、食欲のある時に食べるようにしてはいかがでしょうか?
  2. 目先を変えてバラエティに富んだ料理を楽しんではいかがでしょうか?
  3. 食事をする前に少し体を動かしてみてはいかがでしょうか?(散歩程度)
  4. いつもと違う場所で食べるなど、雰囲気を変えてみるも一案ではないでしょうか
  5. なるべく家族や友人と食べるようにすると会話も弾み楽しく食べられるのではないでしょうか?
  6. 一人で食事をする時は、好きな音楽をかけたりテレビを見たりゆっくり自分のペースで食べるのもよいのではないでしょうか?
  7. 食べ物の匂いが気になる場合は冷やした料理や常温に冷ました料理がおすすめです。またよく冷えた果汁飲料(リンゴジュース、グレープジュースなど)や微発泡炭酸飲料(ジンジャエール)

 

嘔気・嘔吐

  1. 嘔気防止として、食事の前に氷水、レモン水、番茶などでうがいをする、氷の破片やキャンディーを口に含んでみてはいかがでしょうか?
  2. 1回の食事量を少なくして、ゆっくり時間をかけて食べるように心がけてみてださい。
  3. ごはんやお粥の匂いで吐き気が増強する場合は、主食をパンや麺類に変更してみてはいかがでしょうか?
  4. 嘔吐が頻繁な場合、水分や電解質(カリウムやナトリウム)が失われてしまいますので、食べられるようなら、生フルーツや生野菜(サラダ)やスポーツドリンクから水分や電解質を補うようにしてみてはいかがでしょうか?
  5. 食後はゆっくり楽な姿勢で休息しましょう。(すぐ横になると嘔吐しやすいと言われています。)
  6. 体を締め付けない衣類を着てみましょう。
  7. 吐き気を感じたら深呼吸してみましょう。

味覚の変化

  1. 塩味、醤油味を苦く感じるなど、金属味に感じる場合

     →塩分を控えめにして、だしの風味・甘味・ゴマの香りを利用してみては?
     →酸味(酢・レモン・ミント)や風味はいかがでしょうか?

  2. 甘味に敏感になり何でも甘く感じる場合
     →少し味を濃くしてみては?
     →汁物は甘く感じない場合が多いので、みそ汁やすまし汁、スープの回数を増やしてみてはどうでしょうか?
  3. 味を感じない場合

    →濃い目の調味でメリハリをつけてみては?
    →酢の物や汁物、フルーツの回数を増やすなど、食事の温度は人肌程度で食べられてみてはいかがでしょうか?

 

アドバイス

★味覚障害★
味覚障害の変化に関係している栄養素に亜鉛(あえん)と言う栄養素があります。亜鉛はミネラルの1つで細胞の形成や新陳代謝を促進します。
味蕾細胞は新陳代謝が活発なので亜鉛が不足していると再生が滞り味覚障害の原因とも言われています。
また抗がん剤の中には亜鉛の吸収を低下させてしまうものもありますので注意が必要です。

 

口腔ケアも大切!

  1. うがいや飴で口の中の乾燥を防ぎましょう!
    唾液は口の中を湿らせて噛んだり、飲み込んだりする機能をスムーズにしてくれます。殺菌作用をもつさまざまな物質は口の中を清潔に保ってくれます。
    唾液は食べ物を溶かして味蕾細胞が感知する働きもあります。
    のどが渇いたら、うがいをする、飴をなめて唾液の分泌を促しましょう。
  2. 歯磨きも効果的!
    口の中が汚れていると、味が変わっていきます。
    歯磨きやうがいをすると歯の汚れが落ちて口の中がさっぱりすることもあります。
    口の中を傷つけないように柔らかいブラシでブラッシングしてみましょう。
    歯磨き粉も出来るだけ刺激の少ない物を選ぶとよいでしょう。
亜鉛を多く含む食品(食品100g当たりの亜鉛の含有量 単位:mg)

成人男子推奨量:9mg
成人女子推奨量:7mg

食品名 食品名
穀類 アマランカス 5.8 焼き麩 2.2
オートミール 2.1 とうもろこし 1.7
豆類 凍り豆腐 5.2 えんどう豆(塩豆) 3.6
きな粉 3.5 大豆(乾) 3.2
ひよこ豆フライ 2.7 フライビーンズ 2.6
魚類 煮干し 7.2 たたみいわし 6.6
いかなご 3.9 ふかひれ 3.1
魚介類 牡蠣 13.2 するめ 5.4
かに缶 4.7 わかさぎの佃煮 4.4
ハマグリの佃煮 4.2 干しエビ 3.9
肉類・卵 ビーフジャーキー 8.8 豚レバー(肝臓) 6.9
牛肩ロース(輸入) 5.8 牛肩肉(輸入) 5.0
牛肩肉(和牛) 4.9 牛ひき肉 4.3
卵(卵黄) 4.2 牛もも肉(輸入) 4.1
海藻類 味付けのり 3.7 焼きのり 3.6
カットわかめ(乾) 2.8 青のり(乾) 2.6
ひじき(乾) 1.8 とろろ昆布 1.1
昆布(乾) 1.0 塩昆布 0.7
乳製品 パルメザンチーズ 7.3 脱脂粉乳(粉) 3.9
プロセスチーズ 3.2 カマンベールチーズ 2.8
種類 松の実 6.0 ごま 5.9
カシューナッツ 5.4 アーモンド 4.4
落花生 3.0 くるみ 2.6
きのこ類 干ししいたけ 2.3 まつたけ 0.8
マッシュルーム(缶) 1.0 マッシュルーム 0.6
嗜好飲料 ピュアココア 7.0 抹茶(粉) 6.3

口内炎・乾燥

  1. 味付けは極力薄味にしてみてはいかがでしょうか?
  2. 熱い物、酸っぱい物、辛い物、硬い物、スパイス系の香辛料は控えるようにしてみて下さい。
  3. 冷たいものやペースト状、流動食(ヨーグルト・ゼリー)などは比較的口当たりは柔らかいので食べやすいと思います。
  4. 口内でつぶせる硬さ程度以下にします。口内を刺激する可能性があるため極端に熱い物は避けるようにしてみて下さい。
  5. ストローを使用するのもいいかもしれません。

下痢

  1. 少量ずつ頻回に食べるようにしましょう。
  2. 番茶やタンニンとリンゴジュースのペクチンは下痢止め作用があるといわれています。
  3. 食物繊維を多い物は避けるようにしましよう。
  4. 刺激物(コーヒー・紅茶・お酒・炭酸飲料)、香辛料、揚げ物、油っぽい物は控えるようにしましょう。
  5. 冷たすぎるものは控えましょう。
  6. 下痢が続く場合、体に必要なミネラル成分のカリウムが不足がちになりますので、カリウムを多く含む食品を摂るように心がけましょう。
  7. 腹痛がある場合は下腹部を温めると腸蠕動(ぜんどう)運動を鎮静させ、腹痛の緩和に役立ちます。

便秘

  1. 出来るだけ水分を多く摂取するようにこころがけましょう。
  2. 食物繊維を多く含む食品を食べるようにしましょう。
  3. 軽く体を動かすように心がけましょう。
  4. お腹を温めたり、腹部マッサージをしてみるのもよいかもしれません。
  5. ゆっくりとリラックスした状態を保つようにこころがけましょう。
食物繊維を多く含む食品
食品名 100g当たり 食物繊維3g摂取の目安量
乾燥ひじき 54.9 煮物小鉢1杯弱
干しわかめ 38.0 酢の物小鉢2杯分
まこんぶ 28.6 昆布巻き3個分
寒天 81.3 1カップ分
こんにゃく 1.7 3/4枚
キウイフルーツ  2.7 中1個
1.6 大1個
オレンジ 2.0 中1個
おから 33.3 大さじ1杯
乾燥大豆 16.0 1/6カップ(20g)
納豆 9.6 ミニカップ1/2強
干ししいたけ 43.4 大2枚
グリンピース 6.2 1/3カップ(50g程度)
ごぼう 3.6 きんぴらごぼう小鉢1杯半
アーモンド 14.3 20粒
6.8 大2個
干しそば 4.7 1/4束(80g程度)
食パン 2.6 6枚切2枚

 

◎たんぱく質は便を硬くし、糖質(炭水化物)は発酵して柔らかくし、脂質は滑りやすくします。

おすすめメニューとポイント

卵豆腐
さっぱりとして、特別くせのない味で、タンパク質も取れますし、冷たいので食べやすいと思います。
 


豆乳スープ

 

豆乳を使用することで、なめらかになります。また牛乳よりタンパク質が多いので、たんぱく質強化につながります。

【作り方(1人前)】
●材料

玉ねぎ 50g
人参 15g
ベーコン 10g
豆乳 50g
ポタージュスープの素 5g
パセリ 1g
100cc

※便秘が気になるようであればきのこ類を入れるとおすすめします。

 


牛肉の温しゃぶ風

牛肉はタンパク源であり、野菜はさっとボイルすると食べやすくなり、消化も良くなる。
卸しぽん酢ならさっぱり、口内炎等があるときは、ごまドレッシングにするとカロリーUPにもなります!

※野菜はボイルほうが、柔らかくなり食べやすいです。

 


鶏ささみとレタスの和風サラダ

『鶏ささみ』は鶏肉の中でもたんぱく質が豊富なので少量でたんぱく強化につながる食材です。
ドレッシングはさっぱり味にしたい場合は梅やゆず味でたべるのがオススメです!

 


かぼちゃの含め煮

おふくろの味!かぼちゃは糖質を多く含む食材なので、食欲がないときのエネルギー補給にもなります。

食物繊維も多く含みます。旨みを効かして煮ると良いでしょう!

 


白菜の卵とじ

白菜の煮浸しでも良いですが、卵を入れることで、たんぱく質の強化にもなります!
また水溶き片栗粉をいれてから卵を入れると、まろやかで、たべやすくなります。

 


キャベツの和え物

野菜はボイルしたほうが消化しやすくなります。
シンプルに和え物はどうでしょうか?
ごまを入れるものオススメですが、口内炎がある場合、ごまは炎症しているところにあたるので控えてくださいね!

※風味UPには『練りゴマ』を使用することもオススメです!!

 


いんげんのピーナッツ和え

野菜はボイルしたほうが消化しやすくなります。
シンプルに和え物はどうでしょうか?
ピーナッツを砕いて入れると風味がでて食欲がUPします。
但し口内炎がある場合、ピーナッツは炎症しているところにあたるので控えてくださいね!

※ピーナッツバターでも風味とエネルギーUPにつながります!

 


揚げ出し豆腐のあんかけ

豆腐はたんぱく質を含んでいます。また揚げることでカロリーUPになります。
そしてあんかけにすることで、まとまりやすく、飲み込みやすくなるとおもいます。

※あんかけの具材はお好きもので良いと思います。
今回は『きのこあんかけ』ですが『卵あんかけ』にしたり、シンプルに和風だしだけの『あん』にしてもよいかもしれません。

 


大根のそぼろがけ

シンプルに大根の煮物でも良いのですが、少し手を加えて鶏そぼろあんをかけることでたんぱく強化にあります。
ゆずの皮をのせると香りがよくなりますよ!

 


手毬寿司

一口サイズにすると食べやすいです。
寿司飯のさっぱり感が良いのではないでしょうか?
お刺身は臭いがないので、白血球数が低くなければ、少量の「お刺身」はよいかもしれません。

 


かぼちゃとベーコンのサラダ

かぼちゃは野菜のなかでも糖質と多く含む食品です。
カロリーもあります。煮物に飽きた時は、サラダにしてはいかがでしょうか?

※ベーコンはカリカリにフライパンでいって余分な油は取り除く。マヨネーズを加えることで、マッシュ状態になり食べやすくなります。

 

【作り方(1人前)】
●材料

かぼちゃ 50g ベーコン 10g
塩・胡椒 少々 マヨネーズ 15g


ゼリーとフルーツ盛り合わせ

ゼリーやフルーツはさっぱりしているので食べやすいと思います。
お好きなフルーツとお好き時間が食べると良いでしょう。

 

フレッシュフルーツは香りとみずみずしい味は、どんな時でも食べやすい食材だと思います。
ビタミンCやカリウム、食物繊維のほか、エネルギー補給にも役に立つと思います。
旬の果物を取り入れると良いでしょう!
※消化酵素の多いパイナップルやパパイヤ、マンゴー、キウイは不快感や刺激を感じることがあるので注意が必要です。
※下痢がある時は、食物繊維の多い、パイナップルや酸味の強い果物は控える方がよいです。
※白血球が低い時は、よく洗ってから皮をむいて、カットして下さい。皮ごと食べる果物は良く洗ってから食べましょう!


里芋の田楽

里芋は野菜のなかでも糖質と多く含む食品です。
カロリーもあります。また消化がよいので、胃もたれも少なくオススメです!

 


白和え

豆腐も崩してあり、食べやすいと思います。
やや下痢のときは、具材をシンプルにすることをオススメします。

下痢がある場合:繊維の多いものや控える
 →こんにゃく、ごぼう・レンコンなどの根菜類は注意が必要です。

 


トマトスパゲティ

香りやトマトの酸味が食欲をそそるのではないでしょうか?
具材もシンプルにハム・玉ねぎ・ピーマンにして『ナポリタン』にするのもオススメです。

スープスパゲッティもオススメです!
焼きそばも口内炎がなければ、ソースの香りが食欲をそそるのではないでしょうか?

 


温泉卵

温泉卵!
喉ごしもよく、胃腸に優しい食材です。
市販のものを使用するとよいでしょう。

※茶碗蒸しも良いですよ!

 


ヨーグルト

ヨーグルトは腸に優しい食材です。
そのまま食べるもの良いですし、缶詰フルーツと混ぜて食べるものオススメです!

 


卵オムレツ

卵にひき肉やみじん切りにした野菜をいれて焼いたものです!
タンパク源にもなり、香りもよいのでオススメです。

 


シンプルで食べやすい主食メニュー

おにぎり

いなりずし

サンドイッチ

もちろん
お粥・お茶漬け・雑炊・うどん(温・冷)・そば(温・冷)・冷やしそうめん(にゅうめん)・冷やし中華・ラーメンなど食欲に合わせて食べやすいものを口にされることをオススメします。

 


汁物メニュー

味噌汁・かき卵汁・とろろこんぶ汁・
はんぺんのすまし汁・コーンスープ・
パンプキンスープ・コンソメスープ・野菜スープも
オススメです!

 

メニュー 食欲不振 嘔吐・嘔気 味覚の変化 口内炎・乾燥 便秘 下痢
卵豆腐      
豆乳スープ      
牛肉の温しゃぶ風        
鶏ささみと
レタスの和風サラダ
       
かぼちゃの含め煮
白菜の卵とじ
きゃべつの和え物  
インゲンのピーナッツ和え  
揚げ出し豆腐のあんかけ    
大根のそぼろあがけ    
てまり寿司      
かぼちゃと
ベーコンのサラダ
   
ゼリーと
フルーツ盛り合わせ
     
里芋の田楽        
白和え  
トマトスパゲッティ  
温泉卵      
ヨーグルト    
卵オムレツ    

 

※下痢や嘔吐・嘔気があるときは、やや脂質を控えたほうがよいでしょう。
脂質は、便への影響や胃もたれ・ムカつきにつながることもあるので注意が必要です。

 

※紹介メニューは実際に当院で提供している食事です。入院された場合は、担当栄養士が病棟へ伺い、食事内容の確認を行います。必要に応じてできるだけ本人の希望に添えるよう実施していますので、お気軽にお声かけ下さい。

 

参考図書
・抗がん剤・放射線治療と食事工夫(女子栄養大学出版部)
・がん患者の栄養管理(南山堂)

 

2013年4月  第1版作成
神戸海星病院・栄養部
化学療法委員会

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