緑内障とは眼球と脳をつなぐ視神経の障害によって視野が欠損していく進行性の眼疾患です。
眼の固さをあらわす眼圧と病気の進行に密接な関係がありますが、必ずしも高眼圧でなくても発症します。
完全に治療する方法はなく、眼圧を低く抑えることによって病気の進行速度を遅くすることが可能です。
点眼剤などの治療でも眼圧が下がらず、緑内障の視野障害の進行が認められるときには手術療法を考える必要があります。
手術方法は大きく2種類に分けられます。
手術時間はそれぞれ約60~90分です。
◎線維柱帯切除術
眼内と結膜(白目)下の間にバイパスを作成して、眼内の水を結膜の下に作成したプールにしみ出させます。
眼圧下降には最も効果が期待できる手術です。
おもに上瞼に隠れる上方の結膜を使用します。
手術直後より眼圧が安定するまで眼球マッサージやレーザーによる縫合糸の切開、結膜の再縫合などさまざまなメンテナンスが必要です。
また術後の感染症対策も必要です。
術後3年ほどで効果が落ちてきます。
◎線維柱帯切開術
眼内の排水管の組織を切開して、眼内の排水の効率を良くする手術です。
効果は線維柱帯切除術より低いとされていますが、ある特定の緑内障や若年者には有効な手術です。
手術直後には必ず眼内出血が見られ、いったん視力が落ちますが数日で改善することがほとんどです。
線維柱帯切除術にくらべてメンテナンスや合併症が少ない安全な手術です。
◎白内障の同時手術
緑内障手術をおこなうと白内障の進行が認められます。
また、白内障手術を同時に行うことによって眼圧下降が得られるという長所もあります。
これらの理由により緑内障手術と白内障手術を同時に行うことがあります。
---*駆出性出血*---
非常に稀ですが眼圧の急激な変動によって眼内の血管が破綻して大出血をこすことがあります。
おきると手術は中止になり失明の危険性があります。
---*眼内炎*---
手術の創より病原菌がはいり、眼内感染を起こす可能性があります(約0.1%)。
眼内感染がおこった場合、再手術、抗生剤の投与をおこないます。
感染をおこすと最悪の場合失明してしまう場合もあるため、感染予防のためにも術前、術後の点眼は指示通り行ってください。
特に線維柱帯切除術の術後は長期間の抗生剤点眼が必要です。
---*高眼圧*---
手術時の出血、炎症などによってむしろ術後に眼圧があがるときがあります。
眼球マッサージや縫合糸のレーザー切開などの処置を行ったり、あるいは点眼薬、内服薬で経過を見たりする必要があります。
---*低眼圧、脈絡膜剥離、濾過胞漏出*---
眼圧が下がりすぎて眼球がひずみ、視力が出にくくなります。
特に線維柱帯切除術の術直後にみられます。
ほとんどの場合が経過観察で改善しますが、眼内の水の漏れなどが結膜より明らかなときには再縫合を行います。
---*術後の視力低下、視野進行*---
緑内障手術の目的は長期的な視力の延命効果を狙ったもので、短期的な視力の向上が目的ではありません。
むしろ術後乱視で視力が下がったり、術直後の眼圧上昇で視野欠損が進んだりすることがあります。
特に進行した緑内障では視力低下の危険性が高いと考えられています。
---*異物感、充血*---
目立った充血は術後2~3週間でなくなります。
線維柱帯切除術では術後も軽度の充血があり、結膜が盛り上がるために異物感を感じることがあります。
線維柱帯切除術は術後2週間ほど入院が必要です。
線維柱帯切開術は術後5日ほどで退院可能です。
線維柱帯切除術では術後は強く目をおしたり、こすったり、不潔なものが直接目にはいったりすることはできるだけ避けてください。
術後3週間で仕事、旅行などが可能です。
術後点眼は長期間続ける必要があります。
手術でも眼圧下降が不十分なときには緑内障の点眼薬や内服約を追加することがあります。
その他不明な点がありましたらいつでも主治医にご質問ください。